カワサキ車 大と中 ZZR1400 & ER-4n その2
だいぶ遅れてしまいましたが、その2です。
路麺仲間のHIRO'Sさんが親切にも新車のZZR-1400を試乗させてくださるというので、うれしさのあまり厚かましくもお邪魔しました。私は普段、他人様のバイクには決して乗らないことにしてるんですが、ついフラフラと理性を失ってしまったんですね。それくらいZZR-1400には魔力があります。
走行5000km、2010モデル限定スペシャルカラー、バリバリの新車ですよ。まぶしいっす。
まずは跨がってライディングポジションをチェック。
ハンドルが交換されてほんの少し上オフセットしてるので、前傾がややゆるい。このちょっとした差がものすごく大きい。実際に走ってみたところでは、ハンドルとシートの距離が近いこともあって見た目ほどキツくなく、ZRXから乗り換えてもさほど違和感がありませんでした。
このハンドルバー良いです。定番のアップのバーハン変更は乗り易いですが、スタイルが崩れるのと操作性が大きく変わってしまうのが悩みどころなんだよね。こいつは一見したところわからないさりげなさがあって、実質は乗り易い。うまいバランスだと思います。
ステップはノーマル。足付き性良好。ZRXよりも足付きよかった。シート表皮を滑らない材質のものにに張り替えてあるので腰がぴったりと決まる。地味だけどこのカスタムすごく良い。実際に走ってみて効果高いと実感。さすがにHIROSさんバイク暦長いだけあって、効果的なカスタムのツボをよく押さえてらっしゃる。
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それではエンジンをかけて恐る恐る発進。でかいバイクだから緊張するね。
ところが!ZZR1400は重心が低いので低速での取り回し性が良いのだ。とくに練習もせずに、駐車場でやや大きめの8の字が簡単にできた。肩と腕の力を抜いてバイクまかせにスイーッと走らせると、きれいにバランスしてクイクイと左右に転回できる。乗り出してすぐ8の字ができるバイクってなかなかない。しかもセパハンなのにね。
とにかくこの「バランスの良さ」はZZR-1400の最大の美点だと感じた。低重心なことと左右・前後の質量バランスが見事にハイレベルで釣り合っているので、バイクの重心にカラダを乗せて無駄な力を抜くことさえ意識すれば、あの巨体をまったく意識せずにスイスイと走らすことができる。
直進性も抜群。低速でフラつかず、中高速で鬼のように直進する。両手を離しても真っすぐにスーッと直進するではないか。カワサキらしからぬ優等生。
ホンダCB1300もバランスの良いバイクだけど、ZZR1400はそれをさらに上回るレベル。
私はフルカウルのバイク経験乏しいので初めはビクビクしてたのだが、まったくの杞憂だった。いやー、驚いたなあ。
ということでさっそく走りましょう。今回は一般道路のバイパス部分で中高速での直進性が主体のインプレです。
まず第一にエンジンが静かでスムーズ。低回転から高回転までよどみなく廻る。トルクの落ちる回転域を感じさせないまま一気に回転が上昇する。ZRXは「ゴリゴリ」と回るノスタルジックなエンジンだが、ZZR1400はまさに「シュルシュル」と回る新世代エンジンだ。ヘッドまわりのメカノイズが少なくて静かなのも特徴。この感触はBMWの横置き四気筒にも似ている。
ラム効果200馬力の加速は凄まじいです。これは文句無し。カワサキらしくて良いです。
意外だったのはインジェクションの出来が素晴らしいこと。
各社ともに最近のインジェクションは改良されて、スロットルのワイドオープンに追いつかないようなことはないですが、「味」といいますか、微妙なところでインジェクションの癖を感じるのが不満でした。
BMWもホンダも、フル加速は問題ないのだが、低速でのスナッチ感というか、燃料噴射のON/OFFのカチカチいう感じや、細かいスロットル操作に不自然さがあってどうも好きになれなかった。
ところがZZR1400ではどういうことか(笑)、インジェクションの癖がまったく感じられない。激しめな加減速を何度も繰り返してみるが、こいつは乗り馴れたZRXのキャブレターのように自然で素直にスロットルに反応する。これには感動した。「ああ、カワサキはついにインジェクションを極めたな。」
キャブレター信者のアナログバイク乗りなワタクシですが、ついに納得するインジェクションに巡りあえた気がします。しかもそれが「カワサキ」だったのがショックというか(笑)、うれしい誤算というか、なんとも爽快で痛快な気分。
Z1100GPから始まったカワサキDFIの集大成だな。
ブレーキが良い。
ニッシンのラジアルマウントキャリパーと、同じくラジアルマウントマスター。なんとも良い部品を使ってます。制動力もさることながら、タッチが良い。どこまでも安心して握り込める感じとでもいいましょうか。ロックさせない安心感がある。
ZRXのブレーキは、制動力は悪くないけども、タッチがグニャとして、ストロークが短くすぐにロックしそうな気分になる「カックンブレーキ」。まあ、たいていの古いバイクはみんなそうですけどね。
ZZR1400をブレンボのモノブロックやラジアルマスターと比較すると、さすがにタッチのダイレクトな微妙感では見劣りしますが、それでも十分以上に良いです。なんというか「うらやましいぞ」です。
フロントサスの剛性感
倒立サスはカッチリしてて良いですねえ。挙動がスムーズで唐突なところがない。ブレーキかけて沈んだままでグーッと安定してステアリング操作できますね。これは驚きですね。自分が上手くなったような気がする。なんというか「ずるいぞ」です。
リアサスの動き
まだ新しいためちょっと渋い感じでしたが、コツコツくることもなく。フロントと同期してグーット沈み込むところが良いです。ブレーキをかけると車体前後が沈んで低くなって安定する感じが気持ちいいです。ボヨンとリバウンドする感触がないので「あれっ」ですね。古いバイクならここでボヨンがあるところなんだけどね。
フロントが良くできているので、ややリアが貧弱に思えるのは、まあ「贅沢な悩み」でしょう。
フルカウルは良いですねえ。高速巡航が楽ちん。ネイキッドに慣れた身には信じられないです。
試乗を終えて。
いやー素晴らしいバイクでした。約150万円の高級品ですからあたりまえといわれればそれまでだけどね。しかし、よく考えてみれば我がZRXも100万円するわけです。でも、ZRXをフルカスタムしたところで、50万円かけてもZZR1400ほどの完成度に到達するのは難しいでしょうね。
そう思うと、ZZR1400はとんでもない「バーゲン価格」に思えてなりません。もしくはZRXが「ボッタリ価格」なんでしょうかねえ。こんなことを書くとお叱りの声があるかもしれませんが、なんとなくそんな気がしました。
なんとも大感動の試乗で大満足でした。得るものも多かったです。でももう他人様のバイクに乗るのはやめたいと思います。壊したりしたらやだからね。
新車を快く試乗させてくださったHIRO'Sさんに感謝。ありがとうございました。
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コメント
>南行さん
お答えが遅れました
2軸バランサーですが
通常回転数2000~3500程度までは非常に静粛です坦々と走る感じです
6000以上はカワサキ車の変貌があらわれ
7500以上は怒涛の加速とエンジンが廻っていることを実感する・・・といった感じですね
R1のように何処までも廻るモーターのようなエンジンの味付けではないです
高速道路では6速入れっぱなしオートマ走行可能です
つまり70キロ~300キロまで6速でカバー出来るトルクがあるということです
反対に1速スタートの場合トルク不足を感じる方もいるようですがセカンダリバルブで唐突なパワーの出方を抑えているようです
ウィリー防止スリップダウン防止策だと思いますが当方はそんなに感じません
ギア比もクロスでもワイドでも無いですがどちらかと言うと少しワイド寄りだと思います
気になるカムチェーンの遊びによる異音ですが
当方はまだ走行数が少ないので出ませんが知人のZZRは自動調整装置が良くなって異音が出始めて暫くすると異音が無くなるそうです
カワサキのエンジンの特徴であったカムチェーンのガチャガチャという音は今後は心配が無いと思います
尚、08モデルからエンジン内部含めかなり改良がされておりますのでZZRの初期モデルとは多少印象が違うと思います
投稿: HIRO’S | 2010年11月 1日 (月) 12時03分
実は以前私も12Rに乗っていた時期があります
結構じゃじゃ馬で振られるバイクでしたが
チューンや部分改造して自分専用に仕立て上げる楽しみがありました
とにかく加速はドッカーン!
4サイクル版マッハという感じでした
スズキのバイクで印象強いのはマフラーの出来です
スズキってマフラーでかなりトルクを稼ぐのが上手いです
社外マフラーよりノーマルの方が良いくらいです
ホンダは世界の優等生
ヤマハは楽器作りの感性をバイクに生かしている感じ
カワサキは新たな独自路線で動きだした気がします
ZZRネタを一つ
カウルをバラしたら
何と!元のネジの位置が合いません(笑)
ヤマハやホンダではありえません
シート下に水入るし・・・
流石 カワサキ!
投稿: HIRO’S | 2010年11月 1日 (月) 11時39分
●たけさん
そうそう、古いバイクは雰囲気ありますけど、やはり新しいのは確実に進歩してますので、比べると迷いますよね〜
たけさんはSRXに乗ってたからご存知ですけど、ヤマハってバンクさせながらもハンドル切って乗るバイクだから、面白いですよね。
それに比べてカワサキは「曲がらない」(笑)。カラダごと突っ込むとようやく曲がってくれる。こういうのも「味」なんだとは思うけど。苦手な人は嫌いになっちゃうかもしれないですね。
ホンダはなんつーか、よくも悪くも「教習車」ですね。車体を傾けずにハンドルを切って曲がる、クルマみたいなバイクです。
スズキは小さいのしか乗ったことないのであまりよく分からないのですが。軽快でスパンと寝かし込めるのが持ち味でしょうか。
それぞれに楽しいです。
やっぱりカワサキは「漢」の雰囲気が最大の個性なんでしょうか(笑)
投稿: ケビン | 2010年11月 1日 (月) 06時28分
●Yuichiさん
騒音規制を乗り切るためにはエンジン設計を大胆に変更しないとダメみたいですね。我々の四気筒はカムチェーンの音だけでも規制クリア難しいはずですから、ダエグは苦労して苦労して吸排気音を消したんだと思います。
それに比べて、新設計のエンジンはいいですよね。音量をおさえたまま回転を上げられますから。
だって、ZRXがフルパワーでも125馬力なのに、なんでZZRは200馬力なのって、ねえ(笑)
投稿: ケビン | 2010年11月 1日 (月) 06時22分
●南行さん
カワサキが満を持して発表したフラッグシップだけあってすばらしいですね。もちろんZX-12Rも大好きですよ、ゴマすりでなく(笑)
2気筒のドカやBMWボクサーのように振動なしでは成立しないバイクは、静粛すぎると困ったもんですが、四気筒はそもそもがパワーとスムーズさを目的として開発されたエンジンですから、静粛な方向にどんどん進化したとしても違和感ないというか、それが正しいありかたかなあ、と私は考えております。
なので、このZZRのエンジンはとても気にいりましたし、振動がないからつまらないとは全然思いませんでしたよ。
コンパクトなのも正常進化の結果として高く評価します。これくらいコンパクトだとフレーム設計の自由度が高まりますので、思い切り低重心にできていいなあと。
まあ、そうですね、しいて味といえば、2010モデルYZF-R1のクロスプレーン不等間隔爆発の排気音と脈動には強烈な印象があります。四気筒はこちらの方向にいくのもありだなあとは思ってます。
投稿: ケビン | 2010年11月 1日 (月) 06時16分
●HIRO'Sさん
試乗させていただきありがとうございました。
刺激をたくさん受けましたよ〜。
長〜いバイク人生を着実に進む姿がいいですねえ。
ずっと乗ってるのがいいです。
これからもアドバイスくださいね。よろしくお願いします!
投稿: ケビン | 2010年11月 1日 (月) 06時08分
こんばんは~
相当ないい意味でのショックだったみたいですね
俺も学生の頃エリミネーターの初期型に乗ってて、友達のZZR400と乗り比べした時にあまりのバランスのよさに同じ重量のバイクとは思えないくらい驚いたのを今でも覚えてます
でもほんと、コメントや本文にもありますけど完成度の高さのさらに上をいってカワサキならではの乗り味、ヤマハならではの乗り味っていうのを構築していって欲しいですね
投稿: たけ | 2010年10月31日 (日) 22時23分
スペシャルカラー、綺麗なオレンジですね!!
HIRO'Sさんのコメントにも書かれてますが、Kawasaki車が軒並み生産終了となったときは、どうなることやらと思いましたよ。
でも、そんな時代のハードルを強かに乗り越えて、進化していくのですね~
投稿: Yuichi | 2010年10月31日 (日) 20時20分
追伸
(1)ZZRに乗って思ったこと
ZZR1400は一応カワサキの旗艦ですが当初思っていたほどハードなバイクではないです
全体のバランスが良いのでとにかく疲れません
”漢のバイク”と言うより”大人のバイク”という感じです
実際フルアクセルでぶっ飛ぶような走りをしなくなりました
(2)今後のカワサキに期待すること
とにかく”漢カワサキ”的なイメージが強いメーカーですが世界基準に合わせてジェントル化の方向性を感じます
それも”漢”のイメージを残しつつです 昔のカワサキは「パーツは錆びるしガタがくるのが早い」というイメージでしたが2003年頃から変化してきましたね
インジェクション化の技術も他メーカーより遅れていたので廃盤になる機種が相当出ました
暫くは新型出ないのかな? と思っていましたが
2011年モデルからは勢いが付いてかなりの新型を出してくるようです
そこでメーカーさんにお願いです
例えば”ハンドリングbyヤマハ”のように他メーカーが真似できない領域を作って欲しいです
そして
誰が乗っても安全に楽しめる部分を大切にして欲しいです
(3)私とバイク
私が最初にバイクに乗ったのは14歳です 知り合いの別荘に放置されていたカブをひと夏乗り回していました(免許というものを知らなかった:ウソ!)
16歳で原付免許を取得し中古のヤマハミニトレールを買いました そりゃあ面白いですよ 50ccで遠くは仙台まで行った事もあります
それから順々に免許をとり少しづつ大きい排気量のバイクに乗り換えていきましたが高校生の時ハマッたのがモトクロスです バイク屋の親父さんに懇願してモトクロッサーを借りて毎週末桶川に通っていました
メカを覚えたのもこの頃です バイク屋の親父さんに言われました「自分の命を託すものは自分で面倒みろ」
今でもこの言葉をよく思い出します
だからケビンさんが”他人のバイクには乗らない”というのも良く理解できます
長い間バイクに乗り続けてきましたがまだまだバイクに乗って何処か知らない風景を味わってみたいです
すれ違うライダーとのひと時の会話を大切にしたいです
ZZRは本当に素晴らしいバイクです 早朝に乗り出す時にエンジンに火をいれると小さな感動を味わえます
「今日一日一緒に楽しもう」というバイクとの会話があるような気がします この一瞬がツーリングの総てとも言っても良いかもしれません
でも最後はカブかな???
最初がカブだったせいではないですが世界で一番売れているバイクです 未だに本田宗一郎の精神が乗り移った一台だと思います
バイクは二輪 双輪ですね 男と女 白と黒 水と空気 一見相反する存在ですがどちらか一方が欠けたら成り立たない
それが同時に前へ向かって動き出せばすべての事が自由になる・・・
そんな気がしています
何方かZZRを手に入れるのを躊躇している方
ケビンさんのページの読者なら是非当方のZZRを試乗してください
何時でもどうぞ
駄文・長文失礼しました
投稿: HIRO’S | 2010年10月31日 (日) 18時05分
やはり他所の馬には乗ってみないと、その味が分かりませんからねぇ。 私も乗ったことがないので法螺が吹けずに少々困っております。
いつもの観察眼のキメ細やかさに恐れ入谷の鬼子母神。
メガマシンの振動対策として二次バランサーを1軸とするか2軸とするかメーカーが悩むところだそうですが、2軸のZZRはどうだったんですか。 率直なところ、、、静粛すぎるのか、丁度良いのか。
投稿: 南行 | 2010年10月31日 (日) 17時36分
>ケビンさん
ZZR気に入ってもらって幸いです
リアサスはまだ慣らし中なのでフリーなんです
これから締め上げていきますよ
今後の方向性
・スリッパークラッチ導入
・ブレーキマスター&クラッチマスターをブレンボに交 換
・マフラーをワンオフフルエキに交換
以上を画策しておりますが部品代だけで50諭吉かかるので貯金しないとね
また一緒に走りましょう!
投稿: HIRO’S | 2010年10月31日 (日) 10時21分