日豊庵
東京メトロ霞ヶ関駅、A5出口から徒歩1分
ここは霞ヶ関、我が国の行政を司る政府中枢地区。このあたりのビルはすべて中央官庁の本庁舎のためどれもこれも警戒厳重で、一般の人間は容易には侵入できない。きれいに整理整頓された無機質な街並み、立ち食いそばなんてありゃしない、と思ってたんですが。。

やってきたのは農林水産省の建物。この庁舎内に、本日探訪する日豊庵さんがあります。うれしいことに、平日ランチタイムは一般にも公開されてまして、入り口で守衛さんにあいさつすれば誰でも入れるんですよ。ほんとにもう私でもオッケーなんですから。

12時過ぎると大混雑ときいていたので、11:30に訪問。
先客が!!しかもあのスマートな身のこなしはプリンス路麺こと sue__me さん。生めんの茹であがるのを余裕の表情で待ってますね。

日豊庵さん定番メニューの「2食そば」。二色ではなく「二食」です。温か冷やしの日替わりそばにプラス、ミニ冷やし野菜そばがセットで 480円。

まずは温かいかきあげそば。
基本は生めんを茹で置きですが、私は運良く茹でたてバッチにあたった。灰色っぽくて細め、かなり長いそば。そばの量やや多め。日豊庵さんは、みとう庵@大塚の姉妹店で野川麺業の経営になるもの。製麺業が本業だけあってうまいです。つゆはダシよくカエシあっさりめのライトな味わい。かき揚げは小海老が香ばしくさくさくと揚がっておいしい。全体のバランスがとても良い。食べ飽きないうまさがあります。
これだけでも十分満足なのだけど、もうひとつの「ミニ冷やし野菜そば」を食べて、うううーーむとうなった。
写真を見る限りではどうもショボイ、どちらかというと刺身のツマみたいな印象しかなかったのだが、一口食べるなりそれが間違いだとわかり、むしろとんでもなく美味い。ミニという名前と見た目のこじんまりさとはうらはらに量のあるそばをワシワシと食べ進むことしばし、没頭するままにあっと完食してしまった。こういう経験はそうそうあるものではない。
まず目を見張ったのはトッピングの野菜。見た目は生か茹でた野菜風なのだが、どうやらごく少量の油と調味料で軽く薄味に炒めたものを冷ましてあるようだ。野菜特有の水っぽさがないので味が薄まらない。野菜の味がそばとやけにマッチする。シャキシャキとした食感が素晴らしい。こんなにも野菜がそばの具材として相性が良いとは、全くもって始めての体験。これと類似するような料理を思い出すことが出来ない。驚くほど独創性に富んでいる。
そばは前述のとおり生めんを茹でたてのもの。やや細めのそば。つゆは、ごく少量が丼の底に残る程度なのだが、一度そばをつゆに軽く浸してから盛りつけるのか、つゆの味が全体に馴染んでよい具合の濃さ加減。ちょっとした一手間が全体をしっかりとまとめてダレる事がない。野菜と相まっていくらでも食べられる。この味付けならば私は毎日でも食べられると思うくらいだ。
いやはや、これは恐るべきメニューです。見た目のしょぼさに隠された偉大なチカラとでもいいましょうか、将棋の駒でいえば、敵陣に乗り込めば「と金」になる歩駒のような、地味ながらきらりと光る、食べるほどに味わいの増す。そんな一杯だ。
例えるならば、コハダのうまい寿司屋、味付け卵のうまいラーメン屋。安いメニューが一番うまいってのが料理人の心意気だと感服つかまつってござる。

後日、野川麺業専務の野川貴巨氏にうかがったところでは、「私のカラダの80%は冷やし野菜そばでできあがっております。冷やし野菜そばは、創業から変わらぬレシピ。我が社の全ての原点です!!」とのお話をいただくことができた。なるほど納得。あれこそ長い年月考え鍛え抜かれたもの。ちょっとやそっとのアイデアでは出来っこない。私の心が鷲掴みにされたのも当然だと、いたく感動いたしました。

ところで、路麺ダーがもうひとり増えてますよ。こちらは最近めきめきと頭角を現しつつある「路庵」さんではないですか。この二人、こうやってあちこちでそばを箸でもちあげる「リフティング」試合を繰り広げているらしいです。高さと美しさ、そしてピンぼけ手ぶれのなさを競うリフティング、なんだか面白そう!これから流行るかもしれないし、そうでないかもしれない(笑)

ごちそうさまでした。
480円
11:00-15:00
評価は3点 ☆☆☆
二食そば(ちくわ天そば)
いつ食べてもうまい、冷やし野菜そば、ほんとにこいつは名作だ。ちくわ天もグンバツ。
そば湯もいただける。

ちょっと水分が枯れた感じのちくわ天、わたし好みです。

二食でお腹いっぱいになりました。満足度高し。
12時過ぎると怒濤の混雑なので、5分でも早く駆け込むのがコツ。

480円
評価は3点 ☆☆☆
揚げそばがき入りつけ汁そば
みとう庵と母体を同じくするお店。農水省北別館1階にあり、そもそもは農水省職員のための社食であるが、昼時は一般にも解放されている。
2014年新春の新メニュー「揚げそばがき入りつけ汁そば」、温かいつけ汁に、キノコ・鶏肉・三つ葉、そして一口大の素揚げたそばがきの加わる珍しい一品。

そばと汁は文句なしのうまさとしっかりした量で満足のもの。そこにプラスワンの揚げそばがきが他所にないうれしいおまけ。ひと口大のそばがきは米の餅ほど粘り気はないが、さっぱりモチッとし蕎麦の香りで野趣溢れる。蕎麦好きならきっと好むはず。ひとくち食べて楽しんだあとはワサビをたっぷりめに塗って食べていただくとまた目先変わってピリッといける。
このお店の品物はどれもシンプルでうまい。どちらかといえば地味な食材をきっちりとした調理とアイデアで食べさせるのが真骨頂。これを農水官僚諸氏に独占させるのはもったいない。ぜひ皆さんも食べてみることオススメする。霞ヶ関に用事のある人は少ないかもしれないが、ぜひ途中下車して食べてみる価値あり。

丸ノ内線霞ヶ関駅A5出口すぐ近く。

410円
評価は3点 ☆☆☆
カレーそば+冷やし野菜炒めそば小(二食そば)
日替わりの温かいそばと、名物冷やし野菜炒めそば(小)のセットメニュー。農水省内日豊庵ならではのおとくな一品。

あまり食べないカレーそばもここのならうまい。

そして名作の誉れ高い冷やし野菜炒めそば。ほんとうまいな、しみじみとうまい。毎日でも食べたい味。
最近になって農水省店担当のそば打ち職人さんが交替されて、この道50年の練度の高いかたが担当されるようになったとのこと。たしかにうまい、これまでもうまかったが。とくに食感の良さが感じられる。しっかりとしたつながり具合があって、箸でたぐったときの安心感がある。ブチ切れそうな不安感が微塵もないのだ。なるほどこういうところに熟練の技があるのだなと感じ入った。

農水省内だが昼は一般人も入れる。お役所でビクビクだが守衛さん親切なので安心されたし。

490円
評価は3点 ☆☆☆
きつねそば

昼休みは激混みの日豊庵だが、1時すぎるとかなり混雑緩和、2時すぎると待ち行列なし、すぐに食べられる。

360円
評価は2点 ☆☆
天ぷらもりそば
かき揚げそばではなく「天ぷら」を注文すると、別盛りの野菜+海老天となる。揚げ置きではあるがじわりとうまい。

もりつゆがいい。そばも間違いなくうまい。手堅い一品。

夜の営業は職員向けのみだからご注意。11:00−15:00までなら一般人も入れる。
460円
評価は3点 ☆☆☆
野菜炒めそば(温)

冷やしのうまい名作。温でもいただくことができる。冷やしの絶大インパクトにはかなわないところあるが、これもまたうまい。ちょっと気がついたのだが、受取カウンターの右端、食券入れの横にあるセルフわさび。こいつを丼のヘリに塗って、すこしずつ野菜につけながらたべると悶絶のうまさ。野菜の旨味がより感じられる。

ピーク時をはずすのがこの店を楽しむポイント。

390円
評価は3点 ☆☆☆
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